先日ご紹介した「重陽の節句(菊の節句)」の記事に続き、今回はこの日と深い関わりを持つ女神・菊理姫(くくりひめ)について触れてみたいと思います。数字の「9」と「9」が重なるこの日に、どのような意味が込められているのかを、神話や白山信仰とあわせて見ていきます。
9月9日・重陽の節句
9月9日は五節句のひとつ「重陽の節句」。最大の陽数である「9」が重なることから、古来より吉祥の日とされ、別名「菊の節句」とも呼ばれています。菊を観賞し、菊酒を酌み交わして長寿を祈る風習が伝わり、生命を寿ぐ日として受け継がれてきました。
菊理姫と「くくる」の神徳
この「99」を「くく」と読むと、菊理姫の御名と響きが重なります。菊理姫は『日本書紀』に登場し、黄泉比良坂で対立したイザナギとイザナミを「くくる=調停・和合」へ導いた神。結びの神として、人と人をととのえ、縁を結ぶ御神徳を持つとされます。重陽の「長寿」「無病息災」と、菊理姫の「結び」の力を重ねると、命をつなぎ縁をととのえる祈りの意味が見えてきます。
白山信仰と「99」の象徴
菊理姫は白山比咩大神と同一視され、北陸を中心に全国に広がる白山信仰の根本に位置づけられています。白山は日本三霊山のひとつに数えられ、古代から「水を生む山」として豊穣や命の源と深く結びついてきました。その御祭神である白山比咩大神の「白」は、百から一を引いた「99」を表し、「白寿」として長寿の象徴ともされます。ここにも「99」と菊理姫の神徳との不思議な符合を見ることができます。
また白山開山の祖とされる泰澄大師の伝承には象徴的な数の物語があります。修行中に彼の前に現れたのは、まず「九頭龍王」、そしてその後に姿を現した「十一面観音」でした。九(9)と十一(11)が交わって生まれる「9×11=99」という数は、偶然とは思えない神秘的な符合です。龍神の力と観音の慈悲、そして菊理姫の「結び」の御神徳が重なり合うことで、人々に長寿と安寧を授けてきたのだと伝えられています。
さらに白山は古来より修験の聖地としても知られ、厳しい山岳修行の場を通して「生と死」「此岸と彼岸」を結ぶ山と考えられてきました。そこに現れる「99」という数は、単なる長寿の象徴を越え、「命を結び、世界を和合させる数霊」として受け取ることができるでしょう。
命と縁を結ぶ「99」
こうした「99」にまつわる象徴を重ねると、重陽の節句と菊理姫は深く響き合っていることに気づきます。9月9日=99という日に菊を供え、菊理姫を思うことは、命を寿ぎ、縁を結び、人々を和合へと導く祈りに通じるのです。
結びの神である菊理姫と、菊の節句の「99」の重なり。古代から伝わる数霊の不思議に思いを寄せながら、この重陽を過ごしていただければ幸いです。