東国三社のご利益と神話をたどる旅｜鹿島神宮・香取神宮・息栖神社の魅力

茨城県鹿嶋市に鎮座する鹿島神宮は、紀元前660年に創建されたと伝わる関東屈指の古社です。祀られているのは建御雷神（たけみかづちのかみ）。出雲の国譲り神話で剣を手に大国主命に迫った武神として知られ、武運の神、勝負の神として全国から崇敬を集めてきました。


楼門をくぐり抜け、苔むす奥参道を歩くと見えてくる「要石（かなめいし）」は地中深く伸び、地震を起こす大鯰を押さえているとされる霊石です。徳川光圀公が掘らせても底が見えなかったという逸話も残る、神秘に満ちた存在です。


奥宮まで足を延ばせば、深い森とともに心の奥まで浄化されていくような感覚に出会えるでしょう。力強さと静けさが共存する聖地です。

千葉県香取市にある香取神宮は、建御雷神と共に国譲りを果たした経津主神（ふつぬしのかみ）を祀ります。古来より朝廷からの崇敬が厚く、全国にある香取神社の総本社として東国の要を担ってきました。


黒漆塗りの重厚な社殿と、鎮守の森に抱かれた神域には凛とした空気が漂います。宝物館には国宝・海獣葡萄鏡をはじめとする貴重な社宝が収められており、香取神宮の歴史と神威を今に伝えています。


四季折々に変化する境内の風景も魅力のひとつです。春は桜、夏は緑陰、秋には紅葉、冬は澄んだ空気とともに、参拝者の心を浄めてくれます。

茨城県神栖市に鎮座する息栖神社（いきすじんじゃ）は、東国三社の中でも最も静かで素朴な雰囲気を持つ古社です。御祭神は久那戸神（くなどのかみ）。道を守る神として知られ、旅の安全や人生の節目を見守る存在とされています。


また、住吉三神も相殿に祀られており、航海安全や海上交通の守護神としても信仰されてきました。息栖神社は古代の水運の要衝に位置し、鹿島・香取を結ぶ交通のかなめとして栄えました。


境内の見どころは、鳥居の下に湧き出る「忍潮井（おしおい）」。男瓶・女瓶と呼ばれる二つの井戸からは、今も清らかな水が湧き続けており、縁結びや心身の浄化を祈願する参拝者が後を絶ちません。

東国三社は、三社すべてを巡拝することでご利益が高まるとされ、御朱印帳やお守りなども三社巡り専用のものが用意されています。巡拝の順番に決まりはありませんが、神話の流れをたどるように「鹿島 → 香取 → 息栖」と回るのが古くからの習わしです。


国譲りの場に最初に遣わされたのが鹿島の建御雷神、続いて香取の経津主神、最後に道案内をしたのが息栖の久那戸神。この順路には、神々の働きそのものをなぞる意味が込められています。


車であれば1日で回ることも可能ですが、ぜひ一泊二日でゆったりと回ることをおすすめします。それぞれの神社の空気感や地元の風土を味わいながら、心を鎮める祈りの時間を深めてみてください。




神話は遠い過去の物語であると同時に、今を生きる私たちにも通じる教えや力を与えてくれます。東国三社を巡る旅は、自分自身の内側にある祈りのかたちを見つける時間となるかもしれません。

森に抱かれた神社の静けさ、湧き出る水の清らかさ、そして古の神々の存在感。関東に残されたこの神話の地を訪ねることで、日常の中では気づかない大切な何かが、そっと心に灯ることでしょう。