七月七日の七夕といえば、色とりどりの短冊に願い事を書き、笹に飾る風景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
けれども、なぜ七夕には願い事を書くのでしょう。実はその背景には、中国から伝わった行事と、日本古来の自然を尊ぶ心が重なり合った、美しい祈りの文化があります。
七夕の願い事はどこから始まったのか
七夕に願い事を書く風習のもとになったものは、中国から伝わった「乞巧奠(きこうでん)」という行事です。
乞巧奠は、織姫にあやかって、機織りや裁縫が上達するように星へ祈る行事でした。七月七日の夜、庭先に供え物を並べ、針や糸を供えて、手仕事の上達を願ったといわれています。
この行事が日本に伝わると、宮中の年中行事として受け入れられ、やがて和歌や書道など、芸事全般の上達を願う行事へと広がっていきました。
つまり七夕の願い事は、ただ「願いを叶えてください」と祈るだけのものではありません。自らの技を磨き、より良く生きようとする心を、星々へ届ける行事だったのです。
昔は短冊ではなく「梶の葉」に書いていた
現在では、願い事を書くものといえば短冊ですが、昔の日本では「梶(かじ)の葉」に和歌や願い事を書いていました。
梶の葉は手のひらほどの大きさがあり、表面も比較的文字を書きやすいことから、紙が貴重だった時代には願いを記すものとして用いられました。
さらに七夕には、里芋の葉にたまった朝露や夜露を集め、その露で墨をすって梶の葉に文字を書くという風雅な習わしもありました。
この露は、天の川から降りたしずくとも考えられていました。自然の恵みをいただき、星空を仰ぎながら願いを書く。その姿には、自然と人、人と神々が深く結ばれていた日本人の感性が表れています。
やがて紙が広く使われるようになると、梶の葉に書く風習は短冊へと姿を変えていきました。今、私たちが笹に飾る短冊には、そうした古くからの祈りの形が受け継がれているのです。
願いを書くことは、自分の心を整えること
七夕の願い事は、単なるお願いごとではなく、自分の心と向き合う時間でもあります。
「字が上手になりますように」
「仕事がうまくいきますように」
「家族が元気でありますように」
願いを書こうとするとき、人は自然と、自分が大切にしているものや、これから進みたい道を思い浮かべます。
神道においても、神様への祈りは、自分の思いを一方的に願うだけではありません。日々の感謝を捧げ、心を清め、これからの歩みを神様の前で誓うものでもあります。
短冊に願いを書くという行為は、自分の心を言葉にして整え、未来へ向かう一歩を踏み出すための大切な時間ともいえるでしょう。
梶の葉から短冊へ、今に続く祈り
古くは梶の葉に記された願いが、時代を経て短冊へと変わり、今も七夕の夜に受け継がれています。
形は変わっても、そこに込められた心は変わりません。
星を見上げ、自然に感謝し、自分の願いを言葉にする。その一つひとつの行いには、日本人が大切にしてきた祈りの文化が息づいています。
今年の七夕には、短冊に願いを書くとき、ぜひ古の人々が梶の葉に願いを記した姿にも思いを馳せてみてください。
丸亀春日神社では、七夕にちなみ、梶の葉に願いを書く古来の風習に思いを寄せた祝詞御朱印をご用意しております。
皆さまの願いが、夜空に輝く星々のように明るく照らされ、未来へと結ばれていきますように。